2050年のカーボンニュートラル社会の実現にむけて、政府は太陽光発電や風力発電といった変動性再生可能エネルギーの主力化を目指している。そのためには、建物側の電化比率の向上、蓄電池(EVバッテリーを含む)やデマンドレスポンスによる電力需給調整、水素の活用などが必要となる。これらの機器やシステムを都市にどの程度導入すれば良いかを検討するためには、単に年間の総量を計算するだけでなく、時々刻々のエネルギー需給変動が分析できる都市のエネルギーシミュレータが不可欠である。本モジュールでは、将来の都市エネルギーシステムを検討できるプラットフォームとしてGISデータを基にした都市エネルギー需給シミュレータを構築し、これからの都市エネルギーシステムはどうあるべきかを提案する。開発するシミュレータは、様々なエネルギー要素技術の都市への導入インパクトを評価できるものであり、都市エネルギー政策の立案に寄与するものである。
説明図 研究のコンサート
本研究は、GISを用いて時系列のエネルギー需要分析を行い、それをエネルギー関連設備の都市内における空間的・量的配置計画に繋げるものである。5分間隔の計算で個別の建物から、エリア、都市レベルまでエネルギーピークも含めて分析できる点で既往研究とは一線を画す独創的なものである。また、電気自動車が系統に接続される将来を見越し、都市のエネルギー計算に交通のエネルギーを組み込む点も新しい点である。
福岡市は2040年にカーボンニュートラルを実現することを宣言している。現在進めている研究では、福岡市を対象に計算を行っており、福岡市の宣言内容に沿って、その実現可能性を示したいと考えている。可能であれば福岡市とも連携し、本シミュレータの有用性を示すプロトタイプとして福岡市の都市エネルギー政策のあり方を検討することで本研究成果を広く社会実装していくための足がかりとしたい。
またこの他に島根県隠岐の島町での検討も進めており、人口減少地域でのエネルギーシステムのあり方も提案できる。都市と人口減少地域での検討をビジュアル化を行いながら、インパクトのある形で公表していくことで、都市エネルギー計画の重要性を社会に対して訴求していく予定である。
(coming soon)
1. Kentaro Takahashi, Takahiro Ueno, Daisuke Sumiyoshi
Estimation of time series urban energy demand and Examination of optimal energy supply system
Sustainable Built Environment Conference 2019 in Tokyo (SBE 19 Tokyo), 2A-3, 2019
2. Takahiro Ueno, Kentaro Takahashi, Daisuke Sumiyoshi
A Simulation Approach For The Optimization Of Distributed Energy Supply Systems Based On Energy Demands In Business Area
Building Simulation 2019 Rome, ID:210603, 2019
3. Takahiro Ueno, Choi Youngjin, Kentaro Takahashi, Daisuke Sumiyoshi
A Simulation Approach For The Optimization Of Urban Energy Supply Systems
International Conference of Asia Institute of Urban Environment, pp.177-182, 2019
4. 上野貴広,崔榮晋,髙橋賢太朗,住吉大輔
地理条件を考慮した商業・業務地区におけるコージェネレーションシステムの面的普及効果の推定
日本建築学会環境系論文集,85,No.767,pp.55-66,2020
5. 上野貴広,崔榮晋,小野秀光,住吉大輔
商業・業務街区におけるコージェネレーションシステムを用いた地域熱電併給システムの導入効果の推定 複数のエネルギー指標に基づく性能評価
日本建築学会環境系論文集,85,No.778,pp.993-1003,2020