「2050年カーボンゼロ」を達成するためには再生可能エネルギーの活用により脱炭素化を推し進めるともに、地域資源(廃プラスチック、未利用の農業系バイオマス等)の活用・循環を可能とし、二酸化炭素を大幅に削減することが強く求められている。「マイクロ波援用高度炭化水素循環技術の開発」モジュールでは、産業界から排出される炭素系廃棄物を転換し、資源として活用するための革新的技術を開発する。急速加熱、高温活性点の生成など、マイクロ波援用触媒反応プロセスの特徴を生かし、農業系未利用バイオマスの分解技術について検討する。触媒化学、化学工学、農学の「知」を集約し、活用するための共同研究拠点を創り、産業界や他の研究機関との連携を進める
✓ 九州大学の人的資源を有効活用するための部局を超えたネットワークを構築する。
✓ 炭化水素変換に関して本学の「知」を体系化し、活用する。
マイクロ波とバイオマス系炭化水素をキーワードとして、総合理工学研究院、工学研究院、先導物質化学研究所、農学研究院の幅広い分野をバックグラウンドとし、深い知識と経験を有する研究者が中心となり、多元的な学問分野について情報交換を行うとともに自由闊達に議論を行い、革新的な資源有効利用技術を創出する。既存の組織の壁を取り払い、廃棄物やバイオマスなどの資源を変換する技術についての「知」を集約し、活用するためのプラットフォームを形成する。マイクロ波(高周波やプラズマ、電界を含む)を活用した農業系廃棄物の触媒転換技術の開発」について共同研究を行う。バイオマス系廃棄物資源としては、畜産系廃棄物であるバイオメタン、廃棄物のセルロース、リグニンなどの変換技術について、モジュール構成員の知識と経験、技術を融合させて革新的なプロセスを開発する。
[1] マイクロ波援用触媒反応を基盤とした排ガス浄化技術の開発
Co-Cu-Mn複合酸化物(CoxMn1-xCuOy)を用いて、マイクロ波照射下でベンゼンの触媒的酸化反応を行った。Co/Mn比の異なるCo-Cu-Mn複合酸化物では、主にスピネル型複合酸化物が形成され、MnサイトがCoで置換されていることが確認された。Co/Mn比の増加に伴いマイクロ波照射下での触媒の加熱特性が単調に増大した。Co0.4Mn0.6CuOyの事前吸着と熱酸化プロセスを組み合わせることで、マイクロ波の急速加熱による低濃度のベンゼン酸化活性が向上した。密度汎関数理論シミュレーションにより、Co置換が格子酸素の反応性を向上させることが明らかになった。吸着・活性化したベンゼンが格子酸素と反応して豊富な酸素欠陥を形成し、これがO2の吸着・解離を促進し、触媒活性の向上に寄与している。また、水蒸気が触媒によるベンゼン酸化に及ぼす影響も明らかにした。
S. Ding, C. Zhu, H. Hojo, H. Einaga
Applied Catalysis B: Environmental
DOI: 10.1016/j.apcatb.2022.122099