本研究では、小規模スケールのCCSシステムの実証を通じ、地域特化型CCSシステムのモデルを実証する。本研究は、①CO₂吸収・分離・貯留メカニズムの解明、②貯留CO₂の長期安定性評価のためのモニタリング手法の開発、③自治体規模でのCCSの社会・経済的評価、から構成される。日本のCO₂排出量の動向を踏まえ、包括的なCO₂マネジメントの開発が重要である。本研究のフィールドは、地下1,000 m以上の海底下大規模CO₂貯留とは異なり、地下数百メートルの地層を貯留対象としている。居住地域下の浅部を想定するため、貯留メカニズムとモニタリング手法が特に重要である。また、経済性や地域住民の理解も不可欠である。本研究により、浅部へのCO₂貯留メカニズムや貯留手法に関する新規知見が得られ、長期安定性への信頼性やパブリックアセスメントを取得することで、低炭素社会への包括的システム提案が可能となる。
化石燃料由来エネルギーに依存する限りCO₂排出は避けられず、CCSの導入が重要である。大規模貯留サイトの選定は進むが、日本の年間排出量は10億トン超で現行規模では不十分である。世界的にも貯留ポテンシャル拡大が急務であり、本研究は石炭採掘跡地や地熱フィールドなど地域特性を活かした浅部貯留を対象に、化学的トラップによる長期安定性評価と社会的受容性の向上を目指す。
本研究では、残存する石炭層および地熱フィールドに着目し、深部海底下でのCCSとは異なる、地域に根ざした浅部地層でのCO₂貯留を対象とする。選定フィールドは地域固有の地質特性を有し、長期安定性の観点から化学的トラップの促進を目指して化学反応特性を評価する。また、経済性・安全性・社会的受容性の評価も行い、地域社会に適したCCS技術パッケージの確立を目指す。
本研究では、地域特化型CCSの導入可能性を評価し、社会実装に向けた包括的手法を確立する。企業や自治体との連携を通じ、実証フィールドでの応用や国際展開も視野に入れる。かつて資源開発で発展したものの、閉山後は厳しい経済状況に置かれ跡地のみが残る地域は国内外に多数存在する。小規模CCSの実現により、地域経済の再生と脱炭素社会への貢献が期待される。さらに、本手法は海外フィールドにも適用可能で、海外展開も見込まれる。
本研究において対象としている北海道三笠市の石炭採掘跡地において、CO2マイクロバブル水(CO2-MB水)およびCO2の地下固定化のための高炉スラグとフライアッシュの混合スラリー注入試験を実施した。CO2-MB水は約90,000L注入し、スラリーは約48,000L注入した。純粋なCO2の注入量は約330 kgであった。各流体の注入において、とくに大きなトラブル等は認められず、概ね予定通りの量を注入できたことから、同採掘跡へのCO2-MB水およびスラリーの注入性については問題ないことが確認された。また、この間における注入孔内および観測孔内のCO2濃度のモニタリングを実施し、CO2-MB水およびスラリーの注入前後においてCO2濃度の変化は見られず、採掘跡からのCO2の漏洩は確認されなかった。
地下に注入したCO2の石炭への吸着およびCO2の炭酸塩鉱物化に関する基礎的検討も実施した。本研究において、CO2はマイクロバブルとして採掘跡に注入されているため、地下におけるCO2分圧は高くないことが想定される。そのため、低CO2分圧条件における石炭へのCO2吸着量および炭酸塩鉱物化について検討した。この検討によって得られたCO2の吸着等温線や炭酸塩鉱物化反応式は今後のシミュレーション研究に活用する予定である。
さらに、本研究においては、土壌CO2フラックス(単位面積の土壌表面から単位時間あたりに放散されるCO2量)に着目し、これを指標としたCO2漏洩モニタリングを計画している。本年度はその基礎検討として九州大学伊都キャンパス内の屋外フィールドに土壌CO2フラックス測定システムを設置し、土壌CO2フラックスの測定と、各種気象条件および土壌条件から機械学習モデルを用いて予測された土壌CO2フラックスとの比較・検討を行なった。その結果、土壌CO2フラックスの実測値と予測値が概ねよく一致し、精度の高い土壌CO2フラックス予測モデルを構築することができた。すなわち、この予測モデルによる土壌CO2フラックスの予測値に比べて試験フィールドにおいて実測された土壌CO2フラックスの実測値が極端に大きくなった場合にCO2の漏洩が疑われることとなり、精度の高い漏洩モニタリングに有用であることを実証した。

Theodra Noely Tambaria, Yuichi Sugai, and Ferian Anggara.
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Theodra Noely Tambaria, Yuichi Sugai, and Ferian Anggara.
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