建築設計の目的は利用者のウェルビーイング(WB)の増進にあり、近年ではWELL認証などWB関連の評価指標が開発されている。しかし、既存のWB関連の評価指標は静的なものであり、動的な環境解析上でWBの予測が実現できれば、WBを志向する建築設計の支援が可能となる。そこで、本モジュールでは環境解析で計算可能な動的な建築幸福感指標(DAHI: Dynamic Architectural Happiness Index)の開発を目指す。適切な数理モデルの検討、動的環境解析ツールの拡張、環境的な幸福感の実験を通じて、九州大学の総合知を活かして単一の環境要素に紐づく快適性に留まらない建築的幸福感の解明と予測を目指す。
建築設計の目的は利用者のウェルビーイング(WB)の増進にある。既存のWBに関連した建築の評価指標はいずれもチェックリスト形式の静的なものであり、動的な環境解析上で計算可能な指標はない。動的な環境解析上でWBの定量的な予測が実現できれば、WBの増進を目指した建築の設計支援が可能となる。本モジュールでは、環境解析で計算可能な動的建築幸福感指標(DAHI)の開発を目指す。
本研究は建築分野の総合的な知見が必要なだけでなく、指標の定量的なモデル化においてウェルビーイング評価に関する知見や、幸福感への環境要因の影響を把握するための実験では脳科学分野の知見が求められる。先端的な研究技術と実験設備を有する九州大学の総合知を活かして、本モジュールでは単一の環境要素に紐づく快適性の評価に留まらない建築的幸福感の解明と予測を目指す。
本研究の主な課題は(A)動的な建築的幸福感(DAHI)の要因・定量化の検討、(B)動的環境解析ツールの拡張、(C)環境的幸福感の被験者実験の3点である。モジュール期間終了時に動的建築幸福感指標(DAHI)の初版の開発と数値解析を実現して、設計支援や教育現場で実用可能な段階を目標とする。
動的建築幸福感指標(DAHI)の開発に向けて(A)動的幸福感指標(DAHI)の構築、(B)DAHIのための動的環境解析ツールの拡張の課題を実施した。
(A)DAHIの基本的な数理モデルを検討した(図1)。熱・光・風の各環境がもたらす効能(eHAP)を、非対称ガウス関数によって表現し(図2)、それらを積および和で統合する数理モデルを構築した。非対称ガウス関数のパラメータを調整することで、幸福感における覚醒系(元気・活力など)と非覚醒系(リラックスなど)の差異を表現できる。また、本モデルでは各環境の相互関係、効能の強さ、および考慮すべき環境的・建築的要因を柔軟に設定可能であり、建築空間における複合的な幸福感を適切に表現し得ることが期待できる。
(B)動的環境解析ツールの拡張では、九州大学で開発された熱環境解析ツール(THERB for HAM)を対象に、光環境(室内平均照度)および風環境(室内気流速度)を推定する簡易モデルを実装し、DAHI解析に向けて機能を拡張した。拡張された動的環境解析ツールにより、対象建物・空間における熱・光・風環境で喚起される幸福感(DAHI)を解析可能である(図2)。試計算の結果、窓からの日照や通風を介した幸福感への効能を反映した環境評価がDAHIで可能となる事を確認した。

有馬雄祐, 宗方淳, 伊丹弘美, 中村知靖
日本建築学会環境系論文集, 90, 834, 348-359, (2025)
DOI:10.3130/aije.89.282

有馬雄祐, 宗方淳, 伊丹弘美
日本建築学会環境系論文集, 89, 820, 282-293, (2024).
DOI:10.3130/aije.89.282

Kaori Tamura, Sayaka Matsumoto, Yu Hsuan Tseng, Takayuki Kobayashi, Jun'ichi Miwa, Ken,ichi Miyazawa, Toyotaka Hirao, Soichiro Matsumoto, Seiji Hiramatsu, Hiroyuki Otake, Tsuyoshi Okamoto
Journal of Physiological Anthropology, 41, Article number: 16, (2022)
DOI:10.1186/s40101-022-00289-x

Kaori Tamura, Sayaka Matsumoto, Yu Hsuan Tseng, Takayuki Kobayashi, Jun'ichi Miwa, Ken'ichi Miyazawa, Toyotaka Hirao, Soichiro Matsumoto, Seiji Hiramatsu, Hiroyuki Otake, Tsuyoshi Okamoto
PLOS ONE 16, e0249235, (2021)
DOI:10.1371/journal.pone.0249235

Takashi Oshio and Kunio Urakawa
Journal of Environmental Psychology, 32(4), 410-417, (2012)
DOI:10.1016/j.jenvp.2012.07.003