wolle2022年度伊藤早苗賞・女子大学院生部門優秀賞受賞発展途上国においては、インフォーマルセクターが経済と環境に果たす役割が大きいことが知られております。しかしながら、インフォーマルセクターに関する統計情報が不足していることから、その実態がよく分かっておりません。三苫さんは、インドの限られた統計情報をもとに独自のデータベースを開発し、インドにおけるインフォーマルセクターが経済と環境に果たしている役割を解明しようと研究に取り組んでおります。三苫さんには単なる論文出版だけにとどまらず、その成果を広く世の中に還元する姿勢をもって研究に取り組むことを期待しております。Q-Energy Innovator FellowshipMITOMAHaruka7経済学府経済システム専攻 博士後期課程2年経済学研究院 教授指導教員からメッセージカーボンニュートラル社会の実現に向けて、各企業は自身の生産活動に伴うCO2 排出だけでなく、サプライチェーン全体のCO2 排出に責任を持ち、取引先や消費者と協調してCO2 排出削減を行うことを求められています。サプライチェーンを通じた効果的なCO2 排出削減を行うためには、まず現状のサプライチェーンにおいてどのようなプロセスにCO2 排出が集中し、そのCO2 排出を削減するためには誰と協調する必要があるのか明らかにすることが重要です。しかしながら、世界のCO2 排出量の約３分の２を占める新興国や発展途上国では公式の統計に記録されない非正規の生産活動を行うインフォーマルセクターがGDPの約３分の１を占めるため、サプライチェーン全体のCO2 排出構造を正確に把握することが困難な状況にあります。（発展途上国におけるインフォーマルセクターについては、衣服やタクシー輸送など生産する製品・サービス自体には違法性が無いことが多いです。）インフォーマルセクターは生産がごく小規模で技術水準が低く、政府の排出量規制等の規制下にないことからインフォーマルセクター由来の環境負荷が懸念されています。本研究ではインフォーマルセクターを考慮した新たな産業連関表（主要なGDP統計の一つ）を推計し、CO2 排出量データと組み合わせることで、インフォーマルセクターがサプライチェーン単位のCO2 排出（カーボンフットプリント）にどれだけ寄与しているか明らかにします。現在は世界第３位かつ世界最大規模（GDPの約50％）のインフォーマルセクターをもつインドを対象としたケーススタディを行っています。インフォーマルセクターを考慮してインドのカーボンフットプリントを可視化した結果、年間約３億トンのCO2 を排出する建設産業のサプライチェーンにおいて、インフォーマルセクターが含まれる取引が約15％寄与していることが分かりました。したがって、これまでインフォーマルセクターを対象として環境政策が導入された事例はほとんどありませんが、カーボンニュートラル社会の実現に向け、インフォーマルセクターを考慮した対策の導入が重要になり、そのためにはインフォーマルセクターを直接・間接的な取引先とするフォーマルセクターの企業からのアプローチも必要です。インドは今後グローバルサプライチェーンにおいて、中国に次ぎ重要な役割を担う可能性があります。今後は、インド国内のインフォーマルセクターの問題とグローバルサプライチェーンの関係性に着目し、サプライチェーンを通じたCO2 排出削減について分析していきたいと思っています。発展途上国の経済システムに着目したカーボンフットプリント分析加河 茂美インフォーマルセクターの生産活動を考慮したカーボンフットプリントの実証分析三苫 春香02f
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