脱炭素エネルギー先導人材育成フェローシップ 2022年度
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wolle第254回日本作物学会講演会におけるポスター発表の様子作物と競合しないバイオ燃料の作成はカーボンニュートラルの実現にとって重要である。将来的に気候変動が激しくなる中で、耕作不適地においても栽培可能なストレス耐性の強いバイオ燃料作物を創出する。この目標のために、佐藤君はバイオインフォマティクスを駆使し、環境ストレス耐性植物のゲノム機能を解析し、ストレス耐性に寄与する物質を同定すると共に、バイオマスエネルギーの原料となるデンプンやセルロースを効率的に合成する条件を絞り込もうとしている。佐藤君の取り組みによって研究が大きく進展することを期待している。24Q-Energy Innovator FellowshipSATORyoma生物資源環境科学府資源生物科学専攻 博士後期課程1年農学研究院 教授指導教員からメッセージ2050年の脱炭素社会の実現に向け、大気中のCO₂を増加させないカーボンニュートラルエネルギーを石油などの化石燃料の代替として使用するための試みが進められています。その一種として、植物を用いたバイオマスエネルギーが注目されています。一般的には、バイオエタノール等が知られており、これらはサトウキビ、トウモロコシ、及び木材チップ等から得られるデンプン及びセルロース等を原料として合成されます。バイオマスエネルギーの社会実装の例としては、米国バイオエタノールを85%含む燃料の販売が挙げられ、脱炭素化への貢献が期待されています。産コストの低い新たなエネルギー資源作物の作出を目指しています。しかしながら、バイオマスエネルギーを社会により広く普及するために、いくつかの問題を解決する必要があります。近年進行する地球環境の変動により、作物の栽培可能土地が減少することでイネ等の食糧作物と栽培地を巡った競合が起きています。また、エネルギー源になるバイオマスの生産量は、各植物が光合成によってCO₂を固定する能力の優劣に影響を受けます。したがって、CO₂固定能の低い一部のエネルギー資源作物は、単位量当たりの生産コストが石油等と比較して高くなる傾向があります。私は、これらの問題を解決するために、食料作物と競合せず、生本研究では、塩、乾燥、及び重金属等の環境ストレス下でも生育が可能な植物種である、アイスプラント、シュロガヤツリ、及びエレオカリス等に着目しています。これらの植物には、空気中のCO₂固定効率が高い光合成機構を有する植物も含まれます。これらの機能を従来作物に付与するために、環境ストレスへのレジリエント性及び光合成効率の向上メカニズムを解明したいと考えています。研究手法として主に用いているのは、コンピューターを用いて生体内で起こる現象を網羅的に解析するバイオインフォマティクスです。上記の植物体内で、環境ストレスに反応して生産する代謝産物を網羅的に同定します。また、環境ストレスに耐性を有する植物のゲノムから読み取れる潜在的遺伝子の機能及びストレス条件下での発現量を測定します。これらの解析を通して、各植物種がストレスに耐性を有する原因を明らかにし、バイオマスエネルギーの原料となるデンプンやセルロースがより効率的に合成される条件を限定します。将来的には、ゲノム編集技術を用いて、上記の解析を通して明らかにされた遺伝子や、それに関連する生体分子のゲノム配列を別の作物に導入する予定です。生物学、農学、及び情報学の知見にエネルギー工学技術を融合させることで、脱炭素化に向けた次世代バイオマスエネルギーの確立に寄与しうる研究結果を生み出していきます。バイオインフォマティクスを駆使した新規脱炭素エネルギー作物の開発東江 栄食料生産と共存する脱炭素化の実現:機能ゲノミクスを基盤とした光合成改変による環境レジリエント(強靭)なバイオマスエネルギー資源作物の創出佐藤 稜真19f

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