脱炭素エネルギー先導人材育成フェローシップ 2022年度
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wolle国際学会(International Input-Output Association)での研究報告住宅建築物の環境評価においては、空調や断熱等による使用段階がこれまで深く分析されてきました。松嶋さんの研究は、この使用段階に加えて、住宅建築に必要となる素材や部品の製造段階、そして、住宅建築物の解体やリフォームなどのライフサイクル全体を通した環境評価に焦点を当て、住宅の長寿命化やリフォームが環境に与えるインパクトを推計しようとするものです。松嶋さんには単なる論文出版だけにとどまらず、その成果を広く世の中に還元する姿勢をもって研究に取り組むことを期待しております。16Q-Energy Innovator FellowshipMatsushimaSora経済学府経済システム専攻 博士後期課程1年経済学研究院 教授指導教員からメッセージこれまで行われてきた建築部門からの環境負荷評価としては、建築物そのものの製造プロセスにおける技術面に焦点を当てたものが多く、材料の需要など社会の産業構造を考慮したものに関してはほとんどありません。また、建築物の寿命を全国規模で把握することで、将来の国の建築ストックの予測や環境影響への効果的な対策を探ることが可能になりますが、現状では物理的な寿命は考慮されているものの、実際に住まいとして利用される期間、すなわち経済的な寿命に関しては推計がなされておりません。そこで本研究では、国の産業構造を表す「産業連関表」という経済統計を用いて住宅の建設による直接・間接のCO2 排出量を求めます。また、国土交通省によって公開されている、古家付き土地として売買されている古家の築年数データを用いて、住宅の経済的寿命を推計します。さらにその推計値を使用して、住まいとして利用されている住宅のストック数を計算したうえで、そこから排出されるCO2 について分析を行います。本研究の目的は、産業構造を考慮した住宅の製造によるカーボンフットプリント、築年数別の住宅ストックを詳細に分析することによって、日本全体の住宅のライフサイクルCO2 排出量の推計を行い、長寿命化や省エネ住宅の普及などといった、政策の実施がわが国の環境負荷に与える影響について調査することです。図は、2005年、2011年、2015年それぞれの年の住宅建設に伴うカーボンフットプリントと、2005年から2020年にかけて住まいとしての使用が続いている、築年数別戸建て住宅の使用によるCO2 排出量の変化を示しています。なお、図中凡例のCFとは、カーボンフットプリントのことを示しています。国内の住宅の製造・使用によるCO2 排出量は、減少傾向にあることがわかります。これは、住宅の需要の減少に伴う住宅建設数および、住宅ストック数の減少によるものであると考えられます。使用によるCO2 だけで見ると、2020年のCO2 排出量は、2013年度比でおよそ18.5%の減少率となっており、2030年度の40%削減目標のためには、これから22.5%の削減が必要であることがわかります。また、2015年時のCO2 排出量を見ると、カーボンフットプリントが全体のCO2 排出量のおよそ30%を占めることがわかります。このことは、住宅の製造段階が住宅のライフサイクルにおいて重要な段階であり、使用時のみならず、住宅の建設および産業構造についても考慮する必要があるということを示唆しています。効果的な住宅政策評価のためのライフサイクルアセスメントツールの開発加河 茂美住宅建築の包括的なLCA評価フレームワークの開発と実証分析松嶋 そら11f

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